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法務管理

「ロースクール・ビジネススクール留学の極意?」

アメリカ 弁護士 法律事務所 法律 ロースクール・ビジネススクール留学の極意?米国で学位(J.D., M.B.A.)を取得した後、多くの方から留学の相談を受けました。さらに、在日中には、いくつもセミナーやアメリカ法の講座なども担当したので、受講生の方々とのつながりもできていろいろと話をする機会もありました。つい数日前も日本からの電話をうけて、大学院に行きたいけれども実際のところを経験者に相談したいという、遠いつてをたよりに私のところまでたどり着いた方と30分ほどお話しました。皆さん、それぞれ真剣に取り組んでおられますので、うまくいくように応援しています。

留学希望者へのアドバイスは、まずは学力特に英語力でしょうか。どれくらいできればよいのかといわれても答えに窮してしまいます。私が今までロースクールやビジネススクール留学のお手伝いをさせていただいた多くの方々の中には、留学が成功した人そうでない人のどちらもいらっしゃいますが、まずは日本での学業の成績と米国での学業の成績は大筋で比例すると考えていいようです。英語力も同様に、日本での受験戦争を勝ち残ってこられた勇者たちは、現実に使われる生きた英語への適応も早いようです。但し、全く反比例した方もいらっしゃいますので、なんら保証はできません。

それでは、一番何が必要なのでしょうか?よく知られていますが、ロースクールでの教育方法を泳ぎ方の練習に例えた話があります。アメリカのロースクールの教育は、泳げない人を沖まで連れて行って船から突き落として、否応なく自分で泳げるようにするやり方といいます。また、ビジネススクールも多少の違いはあっても、ケーススタディーを通して原則を学んでいく方法であれば、根本的な部分ではかなり似ているといえるでしょう。従って、そのような乱暴な教育方針に対しては、英語力よりも頑張りと度胸の方が重要なのかもしれません。日本的な教育方法とはかなり違ったやり方にもめげない人は、是非挑戦してください。

(2004年6月(2007年初秋加筆))

「史上最高の答え?」

アメリカ 弁護士 法律事務所 法律 史上最高の答え?ロースクールでのある授業のひとこまです。教授に質問された学生が「それは、状況次第です。(Depends . . .)」と答えました。教授は、イエスともノーとも結論を出せなかった学生に対して、「どんな質問にも使える最高の答えだね。それでは、どのような状況のときは、どうなのか説明したまえ。」と突上げました。その学生は、はっきり答えが出せず、その場しのぎで言葉につまり、思わずそう答えたのです。しかし、実際の交渉の場では、なかなか真理をついて奥深い答えかもしれません。

さて、どのような世界であっても、スターとはなかなか煌びやかで、その場の雰囲気が盛り上がるものです。アメリカで生活していると、意外なときに意外なところで、隣に名の知れた大スターがいたりもしますが、通常スターと自然に触れ合う機会は少ないようです。

では、契約書上はスターの存在は、どのような影響があるのでしょうか。映画でも、スポーツでも大スターと契約する際には、あるスターのためだけに契約書の交渉が壁にぶつかったり、プロジェクト自体が振り出しに戻ったりもします。大スターの参加で、映画であれスポーツであれ、何億、何十億もの興行収入の上乗せが期待できます。したがって、契約条件一つで収入の分配が大きく左右される状況が、交渉をヒートアップさせ、自然に契約書の頁数の増加に反映されたりもします。

最近の大リーグでの日本人選手の活躍で、大リーグビジネスに関心のある方は大リーグのニュースの中に、何かとビジネス的な要素が入っているのに気づかれているかもしれません。例えば、一般に関心の高い個人成績(勝利数、セーブ数、打率、本塁打、打点等)のほかにトレードを拒否できる権利、年間の打席数によるボーナス、登板試合数によるボーナス等の規定もあり、シーズンも後半になり優勝から見放されたチームは、ボーナス等の支出を避けるために、次のシーズンを念頭におき若手の起用を検討し高額な年棒の選手をトレードに出したり、3Aに落としたり、解雇したり等のビジネス上の判断を果敢に下したりもしているようです。(もちろん、契約条件だけがこれらの判断基準でなく、個人の成績が大きく影響することはいうまでもありません。)これらの条件は、選手毎に異なり、特にスター選手ともなると契約時にお互いの合意を契約上で厳しく確認しあいます。

ところが、映画にしろ、スポーツにしろ蓋を開けるまで、何が起こるかわからない部分が多くありますので、契約で全てを網羅できるような条項の書き込みが必要になってしまいます。現実にはいろいろなケースを予め全て明示することさえ難しく、それまでの経験に基づき、最大の努力をすることをもって納得するしかないのです。その結果、契約書の内容は、出来るだけどのような場合にも対応できるように現実的な範囲で可能な限りのケースが列挙され、それに応じた規定が決められるので、とにかく長くなってしまいます。但し、どんなに頑張っても、全てを網羅することなど到底出来ませんので、数え切れない程の交渉が終わりに近づき、やっと契約かという場で誰かが一言質問したり、意見を言うとまた一から交渉のやり直しなどという最悪の状況が交渉担当者達の頭をよぎり、両者ともに険悪な雰囲気となり「それはもう大丈夫でしょう。」という何の根拠もないある種の暗黙の合意が、立場を問わず発言者を除く全ての参加者の間で形成され、契約交渉終了を目的とする運命共同体的な一種の連帯感が生まれるという笑うに笑えない話もあります。

日本人は、相手をよく知り信頼関係に基づいて契約を行うという精神が取引の根底に流れており、欧米式の徹底的に議論して契約を行うスタイルにはついていけない部分も多々あるかと思います。例えば、日本の契約書には、「問題が発生した際には、両者誠心誠意協議する。」等の文言が見られますが、欧米の契約書にはそのような規定は出てきません。それどころか、「本契約書より前に、又は同時に交わされた合意は、本契約書に記されていない限り、一切有効と認められない。」などの強烈な規定が入っています。これは、国民性の違いに起因する契約書スタイルとでも言えるのでしょうか。

「どっちがいいのか?」という質問が聞こえてきそうですが、それは、あの教授にでも訊いてみましょうか。

(2005年9月)

「国際法務は格闘技?」

アメリカ 弁護士 法律事務所 法律 国際法務は格闘技?最近ゴルフに凝ってしまいました。といっても、いまだに一度もクラブを握ったことはなく、ゴルフのテレビゲームに夢中になったのでもありません。ある日何気なく見ていたテレビのゴルフ番組で、この短いパットを入れると勝利まであと少しという場面で、若いゴルファーのアップが映し出されて、手が震えているのがわかりました。何度も何度も間をおいて握りなおすのですが、震えをどうしても止められないようでした。最終的には成功したのですが、その次のゴルファーも緊張のため、短いパットに苦労していました。最後のラウンドに近く、しかもトップグループで時間を充分に取れる状況だったので、テレビ制作側でも視聴者に彼らの緊張を画面を通しても手に取るように撮影できたのです。ゴルフとは「なんと精神的な要因に左右されるスポーツなのか。」という印象が残りました。

ゴルフの経験のある方は、「何をいまさら素人が、、、」と思っていらっしゃるに違いないのでしょうが、それからは、メジャーなプロのトーナメントでも、最終日の途中まで2位に5打差以上水をあけているトーナメントリーダーが、最後の5ホールかそこらで、下位のプレヤーに瞬く間に追い上げられて優勝できない例が、数え切れないぐらいあるというのも、理解できるようになりました。また、連戦練磨の一流プレーヤーも、最後のウィニングパットで手が震えるのもわかる気がしてきました。

さて、法務とどう関係があるかということですが、国際法務の交渉(訴訟、紛争解決を含む。以下同様。)は、ゴルフと同様に、精神的な要因の大きい業務といえるのではないでしょうか。私も、ヨーロッパからアメリカまで、あちこちでビジネスディールから紛争案件に至る大小の交渉を担当するなかで、一方的に見えたケースの土壇場での大逆転、地道に準備しての完勝、難しい戦いと予想していたのが良い条件での和解に至る等いろいろな経験をしてきました。交渉の場のシチュエーションも、弁護士、会計士、経理担当者、法務担当者、業務担当者、トップの経営陣などの豪華メンバー揃い踏みの交渉チーム対たった一人の担当者の交渉、まあ交渉は成り行き任せというスタンスから、国際的な時差を使ってスピーディに組織的にバックアップ体制を整えてくるチームまで、十人十色ならぬ十社十色のパターンがあります。

どのような交渉にせよ言えるのは、知識(ゴルフで言えば技術でしょうか。)はまずは必須ですが、知識が多く、深いだけでは必ずしもうまくいかないときもあるということです。交渉は、単に知識だけに留まらず、人としての幅というか、人生経験も含めた全身全霊を傾けて行う、いわゆる知的な格闘技かもしれません。現実には、オールスターチームが必ずしも勝つとは限りません。これまで、一人で大人数相手の交渉を行い結果的には良い結果(条件)を引き出した人を、何度か見てきました。すなわち、正確で十分な知識の上に、奥深い人間力とも言うべきプラスアルファを出せる交渉力が最後の最後にものをいいます。この力は、文化、習慣、歴史の大きく異なる者同士が交渉を行う国際法務の舞台では、特に影響力を持ってきます。さらに突き詰めて言えば、法律や考え方が違っても、人間の本音の部分で利己的な考えに固執せず誠心誠意問題を解決しようという力が、知らず知らずのうちに相手を動かして、交渉をまとめ上げる(問題を解決に向かわせる)ようにも思えます。だからこそ、良い法務が重要なキープレーヤーになれる可能性があるのでしょう。

(2005年6月)

「入り口が狭いほどお客様は増える?」

アメリカ 弁護士 法律事務所 法律 入り口が狭いほどお客様は増える?突然、「私は、この歯の治療はやりません。」と歯医者が言い出しました。最近経験した歯医者での話です。いつものかかりつけの評判もよい歯医者で信頼もしているのですが、彼は、「奥歯の部分の治療は、デンタルスクールのクラスでは学びもしなかったし、教授にはこういった問題に遭遇したらできないと答えるように教えられた。」と言って譲りません。それで、奥歯の専門医を紹介してもらい、そちらに予約を入れて治療してもらうことになりました。

いざ、奥歯の専門医に行くと、その仕事振りは見事であり、一事が万事、治療の手際はもちろん病院に入ってから出るまで、無駄のないスムーズな流れでさすがプロと思い知らされました。ただ、事前に打ち合わせしたときにわかっていたのですが、料金のほうもなかなかの値段でした。通常の部分の同じような治療と比較すると、何倍にもなってしまいました。この奥歯の専門医は、一般の歯科医からの紹介を受けて商売が繁盛しており、開業時間も短く、休みなども結構しっかり取っているようでした。現在、アメリカにどれくらいの数の歯科医と奥歯の専門医がいるかわかりませんが、一般の歯医者にすれば奥歯の専門医ほど割りのいい仕事はないと思っているのではないでしょうか。

この経験からも言えるのですが、専門化すればするほど、クライアントの数が増えて競争相手の数が減り、しかも料金は高くチャージできるという法則が、歯医者の世界にも正にそのまま当てはまっているということです。

さて、国際法務を一つのビジネスと考えて見ましょう。日本でも、世間をにぎわせているロースクール開設、司法試験合格者数の増加、帰国子女を含むバイリンガルの若い大学卒業生の増加等があって、国際法務のビジネスはこれまでのように、一部の人だけが担当できるという状況がいつまでも続くはずはありません。それどころか、どんどん競争が激しくなっていくと予測するほうが自然です。このような状況はどのような分野にもあてはまり、そういった競争を保証することで技術なり経験なりの実力が上がっていく健康な状態を維持できるのです。

国際法務の役割を単に英語で法律の業務をこなせるといった段階から、さらに何かの分野に特化していくといった段階へステップアップしていくのが、これからの国際法務のあるべき姿のような気がします。

(2004年12月)

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